作品づくりの中での悩みのひとつに
キャンバスの縁の部分の扱いというものがあります。
キャンバスの縁は、目には入るものの、作品の主であるとは言えない部分です。
正面からの連続で、色を乗せてみるのですが、ぱっとしません。
だからといって、なにもしないままなのも気に入りません。
テープを貼るのも気が進みません。
どんな扱いをしても、そこには違和があるのです。
いったい、この縁の部分は、なんなのでしょう?
縁の正体がわかれば、その扱いの方向性も見えてくるかもしれません。
作品には、正面と背面があります。
作品の主たる部分である正面と、作り手以外、ほぼ見ることのない背面です。
一見意味がなさそうな背面も、なければ正面が存在しません。
そして、このふたつの面をつないでいるのが縁なのです。
たとえば、キャンバスの正面部分を此岸と考えれば、背面は彼岸となるでしょう。
ならば縁の部分は、此岸と彼岸とを結ぶ三途川となるのではないでしょうか。
三途川、すなわち境界です。
キャンバスの縁部分は
正面と背面というふたつの異世界をつなぐ境界であったのです。
縁が境界であるならば、そこは、正面でもなく、かといって背面でもなく
または、正面であり
なおかつ背面であるような存在であるということに納得がいきます。
縁に感じた違和は、境界という性質上、当然なものだったということでしょうか。
縁が境界であるなら、その違和を取り去ることは、なかなか難しそうです。
けれどもいつか、この違和を最小限に抑えるような
縁の扱い方をわたしは見つけたいのです。